スタチンの使用と高齢者の市中肺炎

 スタチンで肺炎が減少する、という報告がいくつかされている。Statin treatment and reduced risk of pneumonia in patients with diabetes,Thorax 2006;61:957-961など。しかし、スタチンの使用と高齢者の肺炎は関係がなく、健康者(healthy user)バイアスが影響しているようだ。

Statin use and risk of community acquired pneumonia in older people: population based case-control study
(BMJ 2009;338:b2137)

研究デザイン: Population based case-control study。65〜94才を対象に、肺炎について2つのマッチしたコントロール群を対象とした。内科的疾患や機能、認知体系など、スタチンと肺炎のリスクの関係性に潜在的な交絡因子となる情報は、医療記録とコンピュータ化されたの薬局データから得た。
第一のアウトカム:最近のスタチン使用と関連する肺炎のリスクを補正して見積もること
結果:症例群1,125名の肺炎患者に対して、2,235名の対照患者をマッチさせた。症例群の方が、慢性肺疾患と心疾患が重症で、機能障害と認知障害が、より重症であった。

現在のスタチンの使用による肺炎のリスク
 症例群 16.1% (181/1125)
 対照群 14.6% (327/2235)
 オッズ比 1.26(95%信頼区間 1.01 to 1.56)


そのうち、入院につながる肺炎のリスク
 症例群 17.2% (68/395)
 対照群 14.2% (112/788)
 オッズ比 1.61(95%信頼区間 1.08 to 2.39)

結論
 スタチンを使用することが、高齢者の肺炎を減少させることは関係がない。これまでの研究結果は、「健康者healthy user」バイアスが影響しているのかも知れない。
 むしろ肺炎のリスクを増加させるかも知れない。