Outcome reporting bias(結果報告バイアス)

 「情報は発信しないと、もらえないよ。」という先輩の言葉を思い出す。診療部長から、「これ読んだ?」と声をかけられた論文。さすが、私が最近何に注目しているか、ご存じ&感謝。

 いい結果しか発表されない「出版バイアスpublication bias」も困ったものだが、当初設定したアウトカムがすり替えられてしまう「結果報告バイアスOutcome reporting bias」もいただけない。

主要な2008年の雑誌で発表されたランダム化比較試験RCTのうち、当初の登録に届け出た項目を試験終了時に解析しているの論文は、半分にも満たないそうだ。一次評価項目バイアスPrimary outcome reporting bias()。一次評価項目の“後付け”,“すりかえ”,“省略”である。

Comparison of registered and published primary outcomes in randomized controlled trials.
JAMA 2009; 302: 977-984

目的:高いインパクトファクターのある最近発表された結果について、試験登録時のつり合いについて評価すること。第一のアウトカムを、登録時とと発表時で比較すること。プライマリアウトカムバイアス(第一のアウトカムのバイアス)が、より有意差のあるアウトカムとなるのか、確認すること。

方法:MEDLINEで,2008年に発表された3領域(循環器,関節リウマチ,消化器)に関して、最高レベルのインパクトファクターを有する主要な一般・専門医学雑誌10誌から,届け出時の情報を抽出し,検討をした。

結果:全論文323論文のうち,一次評価項目が明確かつ試験終了前に登録されていたのは147報(45.5%)にすぎなかった。89報(27.6%)の発表済み論文に登録システムへの届け出情報がなく,45報(13.9%)は試験終了後に一次評価項目の登録が行われていた。また,39報(12.1%)で一次評価項目に関する記述がない,もしくは明確に示されていなかった。さらに,試験終了後に届け出を行ったうえ,一次評価項目に関する記述がはっ
きりしないものも3報(0.9%)存在していた。
 適切に登録されていた147報においても,46報(31%)の論文であらかじめ登録されたアウトカムと論文で報告されたアウトカムに食い違いが見られたという。このうち19報では,統計学的有意差が認められた新たな一次評価項目が論文上で紹介され,当初規定されたものの,有意差が見られなかった一次評価項目が“省略”されたり,論文では一次評価項目として取り上げられないといった矛盾が見つかった。

 登録システムの最も重要な目的の1つである「試験結果がポジティブであれ,ネガティブであれ,公正な解析を行うことで研究資源の有効活用につなげる」にはまだ時間がかかりそうだ。