それはあなたが解く問題でしょうか?


 どうしても日本語にしにくい英語がいくつかあります。「何それ?」と自分自身がうまく説明できずに、そのことについて仲間が増やせずにいる言葉たちです。言葉を使いながらその意味に近づきたいと思います。今回は、イシューです。

 イシューとの出会いは、今年の1月の日本メディエーター協会の2日間B講習でした(「魂が浮いたメディーション」)医療事故などで対話の中であらわれる本当の争点としてイシューが登場しました。「本当は治したかった」医療従事者と「本当は治してほしかった」患者・家族が、医療事故の隠れたイシューである場合は少なくありません。

 つまり、結果としてあるべき世界の仮説をつくり、そのために物事を進む核心部分。圧倒的な結果を出すスタイルに変わるためには、最初にゴールではなく、問題の設定としてイシューを鷲掴みにする必要があるのです。「やりながら、質をよくして、最後に核心」では、人生は終わってしまう。変な日本語ですが「すでにはじめに、勝負は決まっている。」いつからか?。それは解く問題が間違っているということです。すでに解くべき問題の設定を自分が間違えていたら、解くことは、よくて練習。しかし、意味のあることではないので、社会的インパクトはない。では、最初のイシューをどうはじめるか?


 研究者とマーケットの仕事から生まれたこのテキストを、私は2日間で、2回読みました。ものすごさを感じながら、スローリーディングで。それは、わからないことだらけでだったからです。

 最初は、このメッセージがはじまりでした。
圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing

アメリカで研究するようになって最も驚いたことの一つは、日本では考えられないほど生産性の高い研究者が存在することだ。

たとえば僕がローテーションして、最後までそこでdissertation work(博士論文のための研究、活動)をすることにするか迷っていたあるラボ。そこはポスドク、テクニシャンを含めて(註:undergraduate=学部生は殆どアメリカの研究室には居ない)たった5人でやっているにもかかわらず、毎年5-6本ぐらいはペーパーを出し、ほぼ全て一流紙。多いときは年に2本ネイチャーに出し,一本は表紙になったりしていた(#)。
しかも良く日本では見かける深夜も土日も働いて、朝はどちらかというと崩れ気味、みたいな重労働系の生活ではなく、普通に朝来て、「うーん今日は狂ったように仕事をしたな」とかいって七時半ぐらいに帰る。遅くても9時ぐらいかな。週末は飼っている細胞にえさをやりに来たり、続き上必要なミニマムなしごとをするぐらい。


 今回はテキスト「イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」」から、キーとなる単語を拾います。
 まず、イシューの定義です。

issue
A) a matter that is in dispute between two or more parties
2つ異状の集団の間で決着のついていない問題
B) a vital or unsettled matter
根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題

WHYより、WHERE・WHAT・HOW(P.53)

WHYという表現には仮説がなく、何について白黒はっきりさせようとしているのかが、明確になっていない。

counter intuitive (P.62)

仮説を深める簡単な方法は「一般的に信じられていることを並べて、そのなかで否定できる、あるいは異なる視点で説明できるものがないかを考える」ことだ。「常識の否定」を英語で「直感に反している」という意味で、カウンター・イントウイーティブcounter intuitiveというが、この「直感に反したもの」を探す。

cold call (P.79)

知らない人に電話でインタビューを申し込むことを英語で「コールドコール」というが、これができるようになると生産性は劇的に向上する。

so what ? (P.94)

一見すると当たり前のことしかイシューの候補として挙がらないときには、「So What?(だから何?)」という仮説的な質問を繰り返すことが効果的だ。

one week answer (P.105)

3、4ヶ月のプロジェクトであれば、最初の週の最後、遅くとも2週目のはじめには「1週間目の答え(ワン・ウィーク・アンサー)」と呼ばれる第一次ストーリーラインをつくるというのが理想だ。

pyramid structure(P.136)

ピラミッド構造は、「WHYの並び立て」や「空・雨・傘」のようにロジック構造を生かし、結論とそれを支える要点を短い時間でクライアントに伝えるためのコミュニケーションスキルを名付けたものだ。

complete staff work(P.233)

自分がスタッフとして受けた仕事を完遂せよ。いかなるときも。


 スティージョブズも、real artists ships(芸術家は作品を発表する)という言葉を残しています。貴重な自分やスタッフの時間を使うわけですから、最初からイシューが間違った問題(=解く意味がない問題、解けない問題)に時間を使う余裕はないのです。イシューから、はじめましょう。本当に。


これから)本当にすごい本に出会えました。。毎年、年末になると「あああー、この本は誰も読まないで欲しい」という本が出版されます。

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」