薬剤師の個人努力ではなく、「選択と集中」で処方の適正化を図る


Selection and Concentration.
選択と集中。自社の得意な事業領域を明確にし経営の資源を集中的に投下する戦略。
(『わが経営』、ジャック・ウェルチ


 ある日、研修中のスタッフが、急いで薬歴と患者サマリをまとめていました。どうしたのか?、と聞くと、薬剤師の処方介入で、改善した事例を所属先の薬局長から求められている、とのことでした。


 ひと段落したところで、「よかったら、どんな症例か?、聞かせてほしい」と頼むと、スタッフは、こう話してくれました。

 64歳女性です。パーキンソン病、不安神経症です。不眠と不随意運動に困って、抗パーキン剤とD2遮断剤の両剤が積まれていました。
 まず、薬理作用は、ご存知の通り、抗パーキンソン剤はドパミンを上げ、D2遮断剤は、ドパミンを下げます。つまり、真逆の併用。昼の不随意運動は、セロクエルが増量されていました。
 パーキンソンには、セロクエル12.5mgまでなのに、すでに過量な状態です。そして、不眠は、抗パーキンソン剤が邪魔をしていると考えられました。また、セロクエルによる肝障害にも注意が必要な状況でした。
 この時点で医師に相談をすると、内科側はメネシットだけは、継続希望されました。
 メネシットは残す方針で、他の薬剤の減量、中止を提案しました。すると期待通り、不随意運動はピンドロール減量で軽減し、セロクエル中止で、昼間は覚醒できるようになり、リハビリもできるようなにました。
 すべてが整理できたところで、不眠にレンドルミンを処方して、睡眠は良好です。


 彼女の病院では、とくに初回の持参薬、慢性期病棟での介入で、こういった事例への関わりを日常的に行っているそうです。私は、あらためて、薬剤師が処方の適正化に関わることの意義を実感をしました。



 どうなっていれば、このような介入ができるのか?



1.病棟でガバナンス(統治)をとれる力量がある薬剤師を配置する
 最大の課題は、薬剤師の知識ではありません。医師の自尊心に配慮しながら、看護師に行為の意義づけをするという関係を作りながら、巻き込む環境を作れるか?が、問題です。つまり、ガバナンスがとれる薬剤師を配置するということです。


2.まずは慢性期病棟から
 病棟の選択も重要です。まずは、療養型や回復期リハビリ病棟のように慢性期がいい。なぜなら、投与後の結果を薬剤師も評価して、経験として積めるから。よって、急性期ではなく、慢性期から。


3.1つできれば、根付く 慢性期病棟で、最初にその関わり方のスタイルができれば、あとは誰が担当しても大丈夫です。医師や、看護師は、薬剤師の本来の役割を期待するようになるはずです。



気づき)
 ・どうでしょう?、このイシュー。
 ・「選択と集中」で、重い扉は開くか?。向こうに待っているものが楽しみ。
 ・分野でも、今年は成果が期待したいです。


ジャック・ウェルチ わが経営(上) (日経ビジネス人文庫)

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